読書を楽しむ「大西智子 カプセルフィッシュ」
始めてぱちこに出会ったとき 彼女は見ず知らずの私にカプセルを差し出してきた 1ケ月前に海の近くに家のある祖母の家に泊まりに来た私・のりこは、勤めていた 会社の同僚と不倫関係の果てに妊娠し、流産し、会社を辞めた。 母には退職した理由を仕事がつまんないことと上司がうざかったからと嘘をついた。 祖母の家に来てひと月近くシュノーケルをつけて毎日海に潜っていた。 ぱちこは地元の小学生で、学校が終わるとランドセルを背負ったまま 日の暮れるまで毎日砂浜に座っている。 彼女と同じ年くらいの男の子たちがぱちこと呼んでいた。 ぱちこの胸についている名札をみて小学三年生だと知った。 カプセルの中には魚が入っていた。 のりこは祖母の幼なじみが院長をしている診療所で働いていた。 診療所にぱちこの父親が診療にきた。 数か月前に離婚し、小学生の娘と二人暮らしになった。 妻が出て行ったあと一人娘が口が利けなくなった。 のりこの不倫相手は中学の時の同級生だった。 ぱちこは父親から母さんは外国へ行ったからすぐには帰れないと言われていた。 そのことがきっかけで海の前で待つようになった。 訳アリののりことぱちこ。 ふたりの気持ちの中にはすっきりしないモヤモヤが渦巻いている。 カプセルに閉じ込められた魚は海に放してあげたい。 ふたりは知り合ったことで閉じ込められた世界を脱出できる日は近いと いうようなお話。 磁石のように痛みを知る者に痛みを知る者が引き寄せられる。