読書を楽しむ「エリザベス・ストラウト 何があってもおかしくない」
アメリカ中西部にある町アムギャッシュ さびれたこの町を出た者もいれば そこで暮らしている者もいる トミーは酪農場をイリノイ州アムギャッシュから2マイルのところに持っていたが ある夜に畜舎から火が出て住んでいた家屋も焼け落ちた。一家は何もかも失った。 土地を処分しアムギャッシュに家を見つけた。 彼は火事の夜、この世で大事なものは妻と子だと実感した。 それを火事で神が伝えようとしていたと思っていた。 トミーは公立校で用務員の職を得た。35歳だった。 時が流れ妻の82回目の誕生日がやってきた。 車を走らせながらバートン家のことを看板を見て思い出した。 バートン家はアムギャッシュの町では下層の人間と見られていた。 今も自宅にはピートという息子がひとりで住んでいる。 すぐ下の妹は三っ先の町にいる。 末っ子のルーシー・バートンはN.Y.に住みついて作家になった。 酪農場でバートン家の父親を臨時で雇っていたことも思い出した。 トミーはルーシーのことを一番よく覚えていた。 無口な子で、放課後も学校から帰りたがらないことが何年も続いて。 中学生になったルーシーが教室でチョークをわざと折っているのを目撃し 一緒に折ったことがあった。 駐車場で保険屋のグリフに声をかけられた。この男はトミーには親身に なってくれる男だった。グリフにはドラッグに手を出している孫がいた。 衣料品店ではマリリンに出会い妻用に花柄のスカーフを選び出してもらった。 帰りに彼はバートン家のピートを訪問した。ピートから父親が火事のあった 晩に搾乳機の電源を入れにいったという話を聞いた。 (「標識」という短編から抜粋) 何気に世間のひとは世間のひとのことを知っていて、歳を重ねるとともに 何があってもおかしくないと思うようになる。