読書を楽しむ「D・H・ロレンス 麗しき夫人」
ポーリーン・アッテンボローは72歳になっても 薄明りの中では、依然30歳に見間違えられることがあった 驚くほど年を取らない女性であった 顔は美しい卵形で、彫の少し浅いタイプで、弛むような肉がついていなかった。 世間の目に彼女はそういう風に映っていた。 ポーリーンは息子のロバートと姪のシスの3人でロンドンから30マイルの邸宅で 暮らしている。 ポーリーンは領事の娘で小さい頃、まともな生き方を世話するひとが一人も いなかった。そのため自分の息子にもまともな生き方をさせる術を知らなかった。 長男のヘンリーが女優と結婚式の直前に22歳の若さで亡くなったのはポーリーン が女優を嫌っていることを知り、生きる気力を失っていたからだった。 ポーリーンは、己の生を、穏やかに他の人の生に浸透させ、他の人々の生を己の生に 浸透させると言う相互作用を保って、他の人に支配力を及ぼすべく、己の意思を行使 する厚顔無恥な女性であった。 真実は小説より奇なり。見た目で判断することがどれだけ恐ろしいかを知る。