読書を楽しむ「綿矢りさ しょうがの味は熱い」
奈世は身体を温めないと眠れないので 紅茶茶碗にティーバックを溶かし 砂糖といっしょにすったしょうがを混ぜて飲んだ しょうがの味は熱かった 弦と奈世は1年近くも一緒に住んでいる。 一緒に生活して、家族同然となった気でいたが家族に慣れる訳ではないと 奈世は気づいた。 入社して1年取引先に営業をする弦はひとりで外回りをさせてもらえるようになったが 1週間前にひどいミスをした。 反省して、気持ちを切り替えて、今まで通りにがんばろうと思ったがくやしさが 消えなくてやる気が出ないでいた。 奈世は児童館のバイトをしていた。 弦のために夕食の準備をして待っていたが、帰ってきた弦はほとんでしゃべらない。 そして会社から持ってきた仕事をはじめた。 11時半にベッドに入りTVをふたりで見ていても弦はなにもしゃべらない。 人と一緒に暮らすことがこんなに大変だと弦は思い、こんなに近くにいるのに同棲は 結婚に続いていないと奈世は思った。 彼女は一人暮らしの自分の部屋に戻ろうと考えていたら、彼氏が「家賃、はらって」 と言った。 ひとは別々のことを考えていたとしても、心は落ちつくべき場所に落ちつく。 若さにはいつも誤解とかズレがつきまとういうことだ。