読書を楽しむ「小川洋子 海」
結婚の承諾を得るためにボクは泉さんの実家へ向かった 飛行機、リムジンバス、ローカルバスを乗り変えて泉さんの実家へつく頃、 泉さんは乗り物酔いで体調を崩した。 泉さんの家族は両親と90歳のおばあさんと21歳の弟の4人だった。 おじいさんの代まで葡萄農家だったが株で失敗し、土地を失い、おとうさんは 役人になり、弟は音楽をやっていた。 ボクは中学の技術の教師をしている。泉さんは保健体育担当の教師だった。 夜、ボクは弟の部屋で寝ることになった。 弟は楽器奏者と言っていたが部屋に音楽に関するものは何もなかった。 サイダーを飲みながら弟が寝る前にいつも動物番組のビデオを観るのが習慣 だと言ったので二人で観た。 何の楽器の演奏者か聞いたら、メイリンキンと彼は答えた。 その楽器はザトウクジラの浮袋で出来ていて、海からの風が届かないと 鳴らないと彼は言った。 ボクはその楽器の入った木箱を弟が寝た後で手にしたが手に感じ取ることが できたのは、海の風の重みだけだった。 結婚の承諾にいった彼女の家で不思議な楽器の話を聞いて関心を示したが 海からの風がないと鳴らないものだった。 それでも弟と話すことができ、他人と他人の繋がりができてよかったということか。