読書を楽しむ「掌篇歳時記 春夏」
四季を彩る“季節の名前”に導かれ 手練れの十二人がつむぐ匂やかな小説集 今の季節に合わせて5月の2篇を読んだ ☆「長嶋 有 蛙始鳴(かわずはじめてなく)」 ゴールデンウィークに車で青森のおばあちゃんを訪ねる旅に出た母親と渓太だったが ボンネットから煙が出てガソリンスタンドを探した。 やっと見つけたスタンドで店員がラジエターの交換が必要だと言った。 しかしお店に予備がなく店員が知り合いの修理工に頼んで修理することになった。 母は店員に車のキーを預けてスタンドの裏をぶらぶらした。 草むらの先に川があり蛙の鳴く声が聞えた。 ☆「高樹のぶ子 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」 病院の中庭に桑の木が一列に植えられている。 病棟の2階にさつきという少女がいた。半年前から入院していた。 一週間ぶりに窓を開けて光を浴びた。 ドクターが紙の箱に蚕を入れて持参した。 生き物がいると楽しいと言ってさつきに渡した。 明日から桑の葉を食べさせると言った。 ドクターは白血球の数がレベルを超えたと言った。 1年を24等分した24節気や24節気を3等分した72候の季節の暦を題材にした 短編は歳をとった人間には味わい深い。