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読書を楽しむ「宮下奈都 よろこびの歌」

CIMG9963.JPG                                            高校に入学して以来、御木元玲は洗濯籠にいる                                   自分のイメージが離れないでいた                                          周りは真っ白に洗い上げられたシャツで                                  自分だけが洗い直されていないシャツみたいだった                                       母が名の知れたヴァイオリニストの中学生・御木元玲は音大の付属高校に入り、                               そのまま大学へ、さらに大学院へ進むつもりでいた。                                                     ところが、受かると思い込んでいた高校に落ちた。                                               幼い頃から音楽に慣れ親しんできて、音楽と共に生きていくのが当たり前だった。                                    何とか滑り込んだ学校は数年前にできたばかりの新設校だった。                                        普通科しかない学校で音楽の勉強はできなくなった。                                  挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。                            しかし、校内合唱コンクールで指揮を依頼される。                                             練習の初日、放課後の教室に集まったのは31人中5人だけだった。                                         玲は歌う候補曲を「麗しのマドンナ」に決めた。                                                   結局コンクールでは歌は一本調子で、ピアノ担当はミスばかりしていた。                    クラスの一体感もなく終わった。                                    高校の次の行事が初冬のマラソン大会だった。                              玲は運動神経が並外れて悪かった。                                               スタート時点で足が重かった。                                        半分泣きそうになりながら走ったが足も痛く、脇腹も痛い。                       校門をくぐると玲が最後の生徒だった。                                そのとき、どこかで聞いたことのある歌が聞えてきた。                          コンクールで歌った歌だった。                                    誰かに届けたい思いを声を合わせて歌っていた。                            こころが叫ばなければ気持ちは伝わらない。


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