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読書を楽しむ「山田詠美 つみびと」

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笹谷蓮音23歳は真夏の灼熱地獄の中

幼い二人の子を狭いマンションに置き去りにして遊び呆けていた

二人のこどもは飢えと渇きで死んでいった 

蓮音の人生がねじ曲がったのは、夫と離婚してふたりのこどもと家を出たときか、昔の遊び仲間と再び交流を持つようになりはじめた頃。4歳と3歳のこどもふたりに留守番をさせるのは無理だと解っていたが男の誘いに頷いてマンションに帰らなかった。夫と離婚して子連れで放り出され、こどもを養わなくてはならない女に選択の余地はなく、風俗店を渡り歩くことになった。誰に対しても頼れないまま、こどもたちを死に至らしめた。皆に見放され、すがり付くこともできず、助けも求めなかった、こどもたちの父親から養育費も受け取らなかった。彼女は本当に何かを言うべき時に必ず声を失っていた。それで、ただ流されて行ってしまった。

蓮音の母・琴音の母親も夫から日常的に暴力を受けていた。琴音も父親の暴力から逃げるために小学生の時に家出をしことがある。継父であった男に可愛がられたが母の目を盗んで男は琴音に性的虐待をしていた。琴音は結婚して3人のこどもに恵まれたが、ある日蓮音と弟妹を置き去りにして姿を消した。琴音の人生は逃げることの連続で死ぬふり病を病んでいた。蓮音は琴音が姿を消してから誰かにすがるという行為を自分に禁じた。

蓮音の刑は懲役30年。琴音も蓮音も幸せになりたかっただけなのに、そのやり方を間違えてしまった。母も娘も父親もみんなつみびと。つみびとは生きるということをもっと学ばなければ、つみびとから抜け出せない。


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