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読書を楽しむ「折原 一 傍聴者」

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その家では裁判ごっこが頻繁に行われていた

それは父親が弁護士志望だったことに起因していた 

その父の夢は息子にも受け継がれ、息子は裁判の結果を暴力で下すようになった。

そもそもの発端は、その家の姉妹の妹が崖から足を踏み外し大怪我をしたことで両親や弟は姉を厳しい言葉で責めた。

小説家志望のフリーライターの池尻淳之介は親友の等々力謙吾から2か月ほど前に結婚するかもしれないという連絡を受けた。彼の死の1ケ月前には結婚すると連絡があった。その彼が自殺をして亡くなったと母親から電話があった。車の中での一酸化炭素中毒自殺だった。

裁判所では、殺人や詐欺容疑で牧村花音が被告人として数人の男を殺したとは思えないほど落ち着いた態度で裁判に臨んでいた。容姿を見た限り、はっきり言って美人ではなく、女性たちはなぜ男の人たちはわたしじゃなく彼女を選んだのかと嫉妬めいた感情が入っていた。

牧村花音は69歳の夫に睡眠薬を飲ませ、室内でコンロに入れた練炭を燃やし、一酸化炭素中毒によって夫を殺害した罪にも問われていたが警察は事件性がないと見て、手を引いていた。クラブのホステスをしていたときには不動産の社長と付き合い、室内で睡眠薬を飲ませ、一酸化炭素中毒によって夫を殺害した罪も問われていたが証拠がなかった。

野間佳代は裁判の傍聴が趣味で同好の者同士で裁判の感想を述べあう会をつくった。会の名は「毒っ子倶楽部」にした。名前の由来は、毒を吐き合うという意味だった。野間は50歳で団体職員と自分を紹介した。ミルクと名乗った女性は28歳でフリーのイラストレーターと名乗った。お良は坂本龍馬のファンで50歳の専業主婦だった。リリーは30歳前後で在宅でライターをやっていた。

複数の交際相手を殺害した牧村花音。彼女の公判の傍聴に通う女性たち。事件の全貌が見えた時、いつしか「傍聴者」たちが主役になる。これは怖い家族の信じられないようなお話。もっと知りたい人は本を読むしかない。


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