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読書を楽しむ「久坂部 羊 善医の罪」

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3年前、浦安厚世病院に

仕事先でクモ膜下出血で発作を起こし倒れた男・横川達男が入院

心肺停止停止状態で運ばれ、蘇生処置で心拍が再開した

人工呼吸器装着で脳卒中センターに転室し

集中的加療を継続するも多臓器不全併発で亡くなる

脳外科医の白石ルネが担当医だった

横川はほぼ脳死状態で無益な延命治療を行えば多臓器不全で黄疸も出て、下血もはじまっていた。全身に浮腫が生じ、手足が丸太のようになり、腹部も腫れあがり、とても見ていられない状態になると家族は告げられた。これ以上の延命治療は難しいと、本人の意志もあり治療を中止することを決意する白石。横川の苦しむ様子に耐えられなくなった家族は同意し、白石は横川を尊厳死に導いた。しかし、気管チューブの抜管をした後で患者がうめき声を上げたのでミオブロック(筋弛緩剤)を投与した。

3年後、白石先生は麻酔外科医長の大牟田の仇敵になっていた。脳卒中センターの看護師堀田も白石先生を嫌っていた。大牟田は堀田に白石先生に医療ミスはないかと聞いた。そして3年前の白石先生の患者が尊厳死をやったと告げる。やがて亡くなった横川達男の家族にも匿名で病院の看護師から父親は病死でなく、医者に安楽死させられたという内部告発文が届いた。マスコミも医療殺人ー筋弛緩剤で患者を死なすと新聞等で騒ぎ始めた。横川家の遺族も安楽死であれば賠償金が取れると吹き込まれた。病院側も医師会の保険金から賠償金の支払いができることから白石先生の行為を不正だと決めつけた。結局、白石先生は逮捕された。同僚の医師は言う。「こんな結果になるなら、現場の医師は救急蘇生しなくなる。心肺停止で運ばれてきた患者に、手を出さなければ無罪、蘇生させて、ひどい状況を避けるために治療を中止したら殺人罪。」。現場の医師はグレーな状況で刑事訴追の危険に身をさらされながら仕事をしていることを知ることになる。彼女は善意の名医か、患者を殺した悪魔かーー。捉え方はひとそれぞれ。


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