読書を楽しむ「田中慎弥 切れた鎖」
朝鮮半島に近い赤間関にコンクリートの製造と販売で 財を成した桜井一族が住んでいた 平成の初めにかけて桜井一族は十人以上の政治家を出してきた。 父の良史、母の梅子、梅代、美佐子はもともとの資産と市内に持つ 賃貸不動産から嘘のように楽に暮らせた。 一人娘の梅代と結婚した重徳は一人娘の美佐子が1歳になる前に家を出て行った。 美佐子は30近くまでくっついたり離れたりして顔のいい男と同棲し美佐絵を産んだ。 今、梅代は出戻った美佐子と孫娘の美佐絵の3人で過ごしていた。 小道を1本隔てた向かいには在日朝鮮人の教会がある。 美佐子は娘を母親に任せて男のところへ出かけてゆく女になってしまった。 桜井一族も一人娘が三代続き、もともとの資産も借金のような負担になり、 この家を残すだけになった。 重徳の浮気相手は教会の女だった。 亭主を寝取られた梅代の憎悪は教会に向けられた。 このことで母の梅子は重徳を風呂場に立たせ重曹と塩で体をこすり始めた。 一年も経たずに教会から赤ん坊の泣き声が聞こえるようになった。 赤ん坊は望と呼ばれ美佐子と遊ぶようになったが母は会っちゃダメと言った。 一族の繁栄の終焉を迎えた家は切れた鎖のように歯止めがきかなくなった。