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読書を楽しむ「相場英雄 Exit イグジット」

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2014年10月金融コンサルタントの古賀遼は

日銀政策委員会の審議委員青山ゆかりに

磯田大臣からと言って封筒を渡し確認をお願いした

青山は中を確認してその場に蹲った

20XX年。言論構想社の営業マン池内貴弘は部長から月間言論構想の記者に異動を命じられる。編集長から経済全般を担当してもらうと言われる。吉祥寺に住む叔母から電話があり池内の高校時代の元カノ千葉朱美が仙台からアパート・マンション経営向けローンの紹介に来たと告げる。千葉は仙台あけぼの銀行本店営業部に勤務していた。説明書には想定利回り約10%(仮)と書かれていたが池内は大学の同期でメガバンクに就職した黒崎に説明書を見せて意見を聞いたら、あの手この手でセールスをかけて、融資の実績をつくり空室が出始めたら返済を迫るハイエナだと教えられた。銀行は個人や企業から預金を集め、これを資金需要のある企業に融資という形で資金を融通し、預金には利子をつけ、融資には預金より高い利子をつけサヤという収益を得ていた。長年銀行の収益を下支えしていたのは日銀が公定歩合操作をしていて国債の金利が連動していたが、バブル崩壊で銀行の不良債権が発生し、景気の低迷が長引き、日銀は公定歩合という指標を捨て金融緩和に踏み切ったため金利という概念がなくなり金利がマイナスになり地銀は経営難に直面していた。その千葉は2日後、仙台の商業ビルから飛び降り自殺をした。葬儀に参列し、千葉の銀行が顧客が求めていない投資信託を押し売りしたり、金利引き下げで客を奪い取るようなことをしてトラブルになっていたことを知る。千葉は東京へ来たときに神田の金融コンサルティング会社コールプランニングの古賀を訪問していた。

古賀という人物は、芦原首相とは20年前に財界の要人を通した知り合いで5年前に磯田副総理兼財務大臣を紹介され、金融市場の裏側に蠢く人間や投機の機微をレクチャーしていた。彼は大企業の経理や帳簿をきれいにする掃除屋でバブルで財テクに走った大手企業が損をしてもこれを計上せずに、取引のある証券会社に補填させていた。

池内はフリー経済ジャーナリストの河田から政府と日銀が一体となって経済政策を打ち出したが目に見える効果は出ていないことを教えられ、低金利政策やモラルハザード状態の政府と日銀の関係を世間に知らしめたい記事を書きたいと考えた。日銀の超金融緩和政策の長期化がもたらした弊害で疲弊した地銀業界にいた元カノが死を選び、郷里の親友の家業も低金利政策の弊害に苦しんでいた。

そんな時に週間新時代が日銀副総裁の不倫スキャンダルを記事にした。現経営陣の政策運営に不満を持つ日銀OBが日銀を正常化させたい思いからクーデターを計画した。古賀は日銀の組織がガタついたら政策の意思決定プロセスに支障が出て最悪どんなことが起きるか、そして新型コロナウイルスの蔓延で株価指数が下落すると地銀など海外の株式や債券に投資をしていた地域金融機関は打撃を受ける。個人の住宅ローンが焦げ付き、飲食店の休業補償など緊急経済対策が政府は求められる。弱い立場の人たちは失業者になり、国の財政赤字は膨らみ国の台所事情は苦しくなる。スキャンダルで日銀の信用が失墜したら、円も暴落する。

「この国には考えることを放棄した人が多すぎる」掃除屋はまた仕事をしなければならなくなった。

池内も金融機関を記事にして報道すると預金者が銀行に殺到し、取引していた企業も預金を引き出すかも知れない。結果、金融機関は一巻の終わりになる。パニックを防ぐ意味で起きていないことを記事にして記事が事実をつくり出すのは危険だと河田から言われた。

出口の見えない新型コロナウイルスと同様に日本の経済もどうなるのか出口の見えない日々が続く。コロナ過の経済について学ぶには丁度良い物語でした。


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