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読書を楽しむ「エリエット・アベカシス 30年目の待ち合わせ」

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彼女はアメリ、彼はヴァンサン、ほかに3名

5人はソルボンヌ大学の学生で

4人はアパルトマンをシェアしていた

5人はSOS人種差別運動で知り合いソルボンヌ広場でコーヒーを飲んだ。ヴァンサンは経済学部の学生で、アメリは文学部の学生で教職をめざしていた。ふたりはビール一杯が夕食になり、そのあと朝まで開いているカフェで両親のことや願望やあこがれや友人について語り合った。ヴァンサンには入院中の27歳の兄がいた。アメリは3人姉妹の真ん中だった。ふたりは20歳でこのときから二人の関係ははじまるはずだった。ところが、そんなことはぜんぜん、起こらなかった。

ヴァンサンはソルボンヌ広場のカフェに待ち合わせ時間(17時)の10分前に着いたが彼女は来なかった。1時間近く待ってその場を離れた。アメリは翌日友人たちと列車と自転車でヨーロッパ旅行に出発することになっていた。アメリがカフェに走っていったときヴァンサンの姿はなかった。彼と再会するまで10年待つことになった。

1999年大晦日。アメリは30歳で高校の文学教師になっていた。親友のクララとパーティへ行ってヴァンサンに再会した。どうしていたか、これからどうするつもりかおしゃべりした。ヴァンサンは金融とコンサルタントの世界で働いていた。そして、女優のソフィと結婚していた。アメリは本屋の経営者が店舗の売却を決めたときに買取を申し出て本屋の仕事に専念した。ヴァンサンにはジュールという息子が生まれた。

2003年5月アメリは35歳になり外科の研修医ファブリスと同棲しプロポーズされウィと答えた。2005年37歳のヴァンサンはソフィとの生活に息がつまっていた。2006年アメリは二人目を出産したが夫は下品で軽蔑的な男になっていた。夫にFBを教えてもらい知り合いを探したらヴァンサンを見つけメッセージを送った。ふたりは2008年に会う約束をした。レストランで近況を話した。アメリはヴァンサンが妻を愛していないことを知った。2009年アメリは夫の浮気を知り離婚した。アメリはカフェで年下のジェレミーと知り合い妊娠したら彼は消えた。生まれるはずの子は流産した。傷心のアメリは親友のクララと再会しヴァンサンの噂を聞いた。奥さんと別れてパリに住んで入りことを知りメールでヴァンサンに今何をしているかたずねた。彼は”待っている”と返事をした。

2018年5月。アメリとヴァンサンはソルボンヌ広場のカフェで会った。人生は出会いや愛などそっちのけで、ままならない運命へいやおうなしに押し流される。30年前、彼がふれるのをためらった手をそっと握られた。ふたりは30年前にしていたはずの会話を再開した。

すれ違ったまま別々の人生を歩むことになった男と女の物語は、夫婦関係においても意思の疎通や相互理解がままならないことを教え、思い込みや遠慮、価値観や認識の相違をあぶり出す。人生における過ちの半分は行動の欠如、半分は性急さによる。


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