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読書を楽しむ「黒井千次 枝の家」

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台所の小物の買い物のはずが、玄関の背の高い観葉植物に化けた

老夫婦が暮らす郊外の町には開かずの踏切があり町を二分していたが高架線なり、南側に全国チェーンのスーパーマーケットができ、北側商店街に前からあった4階建てのスーパーマーケットは寂れていったが意外にしぶとく営業を続けていた。郊外に住む老夫婦の家では、妻が台所で探し物をしていた。どんなものか要領を得ず、見つからず、夫婦は古い方のスーパーへ謎の台所用品を買いに出かけた。店の入り口に観葉植物が並んでいた。店員さんに呼び名が不明の道具について話して探してもらったが見つからなかった。出口へ向かった時に夫が観葉植物が隙間がないほどに増えていることに気づいた。初老の店員と話をしながらベンジャミンの細い幹が3本絡み合っている鉢を妻が購入した。鉢の木は玄関の上がり框に置いた。3日目の朝、葉っぱが前より増えていた。隙間が葉で埋まっていた。その日の深夜。何か割れるような音がして夫が目を覚ました。音は玄関の方角からだった。ドアを開けると鉢の木の黒ずんだ葉の群れが水位が増すように夫に押し寄せてきた。慌ててドアを閉めた。その後数日、彼の家の戸は開かれなかった。


■他に「紙の家」「次の家」等7作の短編集が収めれている。

「紙の家」はルーズリーフ形式のファイルを本立てから引き出して、指の遊びのようにあちこちをめくり指が止まったページの一人一人の名前を取り出して吟味し始めた。

「次の家」は陸軍の射撃訓練場の近くにある2階屋の家のお話。家主の老人は塀際のコンクリートの縁に黒ずんだ排泄物を見つけたが犬でも猫のものでもなかった。家主がほとんど使ったことのない二階で灰色の生き物を見つけたが逃げられた。家主はいろんな家に住んでからまた次へと移って来たが、ここもそろそろ終わりだと思った。

不気味な内容もあれば、高齢者の暇つぶしもある。


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