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読書を楽しむ「深木章子 灰色の家」

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同級生の結婚式に出席するため

T県山南市を訪れた新井和正は

神社の先にある滝壺で

70を過ぎたと思われる男が

滝壺の底から引き寄せられたかにように

水しぶきとともに沈んでいった

冬樹栗子は医涼療法人愛真会兜山クリニック所属の看護師で53歳。栗子は派遣看護師として介護付有料老人ホーム山南涼水園で園長の宇野の右腕という存在だった。3階が自立者フロアで2階が要介護者フロアとなっていた。定員は80名で入居者の平均年齢は81歳だった。山南涼水園の入居者・柏木正義の遺体が底なし池の水底で発見された。死因は溺死で自殺とみられていた。今年74歳になる元会社員で3年前に入居した。11年前に妻を亡くし、長男との折り合いが悪く、息子一家は一度も面会に来ていなかった。「用なしの親父は静かに消え去るのみ」と書かれた遺書らしきものが見つかった。柏木は乳がんのステージ4だったことが開業医によって知らされた。園内では動揺が広がり、3階の入居者との交流が深かったため、老人たちの模倣自殺が心配された。

柏木の葬儀から5日後、3階の大長老で会社経営者の手塚が突然姿を消した。手塚の息子が父から変な手紙が来て心配になり電話をしたら通じなく、いなくなったことが判明した。手紙には「入居者全員に羽毛掛布団を寄贈せよ」というものだった。

3階の生田晴世が園の倉庫の奥の草地で焼身自殺をした。発見者は清掃会社から派遣された用務員だった。遺書には「とんでもないことをしてしまいました。お詫びのしようもございません。」と書かれていた。園には元警察官の君原が入居していた。栗子はこれまでに溜めに溜めてきたもやもやが一気に解き放たれて、手塚の不可解な失踪について君原の見解が知りたくて部屋を訪問した。生田の自殺についても本当に自殺だったのか聞いた。

終の棲家で起きる自殺や失踪。何が起きているのか。施設内部を蝕む遺産問題、派閥争い、横恋慕など。本当に自殺なのか、殺人ではないのか。そして、新たに山南涼水園が財政難に喘いでいることが判明した。不動産賃貸業の入居者・岩鞍が心筋梗塞で亡くなった。岩鞍には家族がいないため全財産の遺贈を園長の宇野が受けていた。

老人ホームのリアルな暮らしと不可解な事件を学びたい人にはお勧めです。


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