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読書を楽しむ「武田綾乃 可哀想な蠅」

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台所の生ごみを放置していたら

コバエが湧いていた

危害を加えることはないが

疎ましいという理由だけで

排除の対象になる

芽衣子は大学へ行く途中で猫の入った段ボール箱が捨ててあったのを見つけ、それをずっと蹴っているおじさんがいて、動画に撮りツイッターに投稿した。その後、パブロフ康成というふざけた名前の男から一方的な返信が数時間ごとに行われた。ツイッターでブロックすると投稿が相手の目には見えなくなるが芽衣子はスマートフォンの中で彼を「飼う」ことに決めた。ツイッターを立ち上げるとパブロフ康成は今日も吠えていた。康成のアカウントを見ると、元気に他人へ暴言を吐いていた。友人の理依紗と夏鍋会を決行した日にもツイッターのお知らせ通知が来た。康成だった。段ボール箱の中身を撮らなかったことで皆が知りたいことを開示しなかったことが原因かも知れなかった。理依紗に言われ康成をブロックした。康成のいないツイッターは平穏そのものだった。理依紗に自宅で本を貸す約束をした日に彼女が段ボール箱の捨ててあった近くで刺されて亡くなった。ツイッターを開き康成のブロックを解除した。康成から返信があり「お前の動画のせいで人が死んだ。お前は人殺しだよ」とツイートしていた。報道では犯人は既に逮捕されていた。康成は犯人じゃなかった。ただの目障りな蠅だった。誰かの死を利用してまで他人の気を引こうとしている可哀想な蠅だったというお話。


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