読書を楽しむ「パスカル・エングマン 黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル」
男は思った
自分はなにひとつ悪いことはしていない
にもかかわらず
女は外見でしか判断しない
自分には死ぬまでセックスの
チャンスは訪れない
女からは、種を植えつけ
生殖するにふさわしい
相手とはみなされない
そんな男たちはインセル(不本意な禁欲主義者)と呼ばれ、女性増悪と結びついた何万もの男性が匿名掲示板に集うインターネット上で運動をしている。
自分がインセルだと自覚することを
彼らは”黒い錠剤を飲む”と表現する
エステティシャンのエメリは刑務所を訪問し、生涯愛すると信じていた男カリムとの関係を終わらせようとして告白したが、カリムは殺してやると言った。そのエメリが自宅で腹部と首を刺されて殺された。スウェーデン国家警察殺人課の警部ヴァネッサが捜査に当たった。カリムは仮釈放中だったが刑務所には何事もなかったように戻ってきていたがエメリの血液が底についた靴が独房で発見された。
クヴェルスプレッセン紙の記者ジャスミナはホテルのロビーで仕事をしていた時に、男に声をかけられコーヒーを一緒に飲んだあと頭がクラクラして男の車に連れ込まれ数人の男にレイプされた。
エメリの家にあったジャケットの内ポケットにペンが入っていた。そのペンは5年前に公園で起きた未解決の強姦未遂事件の容疑者の指紋と一致した。
ジャスミナは仕事で裁判所へ行き、エメリ殺人事件の審理を傍聴することになった。そして法廷に入ってきた男・カリムを見て自分をレイプした男だと気づいた。ジャスミナはカリムが殺人事件の犯人ではないことを知った。ジャスミナは警部ヴァネッサに会い、カリムがエメリを殺してないと話、その時間レイプされていたと告げた。
TV司会者のオスカルは妻のテレースとパーティへ出席していた、そこへオスカルの同僚ラケルが挨拶に来た。ラケルはオスカルの不倫相手だった。別荘の暖房が動かないとオスカルは妻と別れ別荘へ向かいラケルと一夜を過ごした。ラケルは妊娠したことを告げた。翌日、警察官がオスカルを訪問しラケルが行方不明になったと知らせた。オスカルの自宅の外で血まみれのナイフとセーターが見つかりオスカルの物だと判明した。ラケルは遺体で見つかった。オスカルは自宅近辺をうろつく路上生活者のボリエが犯人だと名指しした。ボリエはオスカルの別荘のドアをノックした警察官のような制服を着た男を見たとヴァネッサに話した。ヴァネッサはエメリとラケルの殺害事件には共通点があると思った。
事件は単純な怨恨殺人と思われたがまったく違う様相を見せ始めた。結婚しない、あるいはできない男たちは黒い錠剤を飲んで、それが増悪となったとき事件が起きる。世相を反映しているようなミステリーは好きです。