読書を楽しむ「畠中 恵 ときぐすり」
ときぐすり=時薬=正しくは「じやく」と読むが若者は
「ときぐすり」と読んだ
飼い猫が高い木の細い枝にいて6羽の鳥に囲まれていた。
町名主の跡取り息子・麻之助は若者から声をかけられ「無事猫を下せたら、相談に
のって」と頼まれる。
麻之助の仕事は支配町の人の話を聞くこと。
猫は無事に下され、若者・滝助の相談に乗った。
滝助は、捨てられたこどもで街道を仕切る親分の下っ端の掏摸に拾われた。
滝助は、賊の飯炊きをしてきたが賊が捕えられたため江戸に逃げてきた。
滝助は14才でこれからどうやって暮らせばいいか、泊まる場所の当ても
なかったので麻之助に相談した。
麻之助は昨日、町を見回りしていたときに北の国から江戸へ賊がやって
くるという噂を耳にした。
賊は押し込みなど悪事を重ねた奴らで若頭とその片腕の悪党だった。
滝助は賊の一味でないかも知れないが口入屋に紹介することができず
そうかといって放り出すこともできず、長屋に住むむめ婆さんに頼んで
泊めてもらい、朝夕は独り者の袋物師・数吉の飯を作り食わせてもらう
ことにした。
滝助は数吉の仕事も手伝いはじめた。
数吉の仕事をするためには字を書いたり、算盤ができなければならなかった。
滝助は「時薬」という言葉を知っていたが「ときぐすり」と読んでいた。
本当は「じやく」と読む。
滝助は、ときぐすりの意味を「歳月を過ごしていくと、そのことが心を癒して
くれる、時そのものが一種の薬になる」と思っていた。
江戸へやってきた賊は滝助のところにきたが捕えられた。
滝助が賊と関わっていたという噂をする者も、10日経ち1月も経つと皆噂を
しなくなった。
誰の上にも時という薬は平等にもたらされた。
人情噺です。よく読むと良いお話です。
現代人もこんな話のひとつやふたつ知っているといいのかも知れません。