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読書を楽しむ「楡周平 バルス」

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「バルス」を名乗る人物が宅配便トラックの同時多発テロを起こした

狙いはネット通販潰しか

ネット通販、宅配共に大量の非正規社員を使っているが

業務量に合わせ調整可能な人間だった

バルスは広がる格差への不満を背景に

派遣法と労働契約法の改正を訴えた

労働人口に占める非正規労働者の割合4割の日本に対する警告小説   

百瀬陽一は大学生で就職戦線の終盤を目指していたが8社目の不採用通知を受け取っていた。母親が大企業への就職にこだわるのには夫が地銀の支店次長をしているが業界で地銀は中小企業扱いだった。陽一は留年しネット通販会社「スロット・ジャパン」で派遣社員として学費稼ぎに働いていた。陽一の職場には大手家電メーカーをリストラされた中高年者も働いていた。TV事業の業績が悪く撤退したことで売るものがなくなりリストラされた。陽一はスロットの作業ノルマを達成し表彰を受けセンター長から就職の誘いを受け、8ケ月連続でノルマを達成し続けたが肝心のセンター長は半月前に解雇されていた。スロットへの就職は断たれ陽一は会社を辞めた。TVのニュースでアメリカの個人所有の島の結婚式で銃の乱射事件の発生を知らせていた。アメリカでは全体の10%に過ぎない人が70%の富を独占していた。貧困から抜け出せない社会への不満から事件が起きた。日本でもスロットを支えているのは圧倒的多数の派遣労働者でいくら働いても時給千円だった。そんなとき高校の同級生と新宿駅の雑踏の中で出会った。同級生は大学を辞めてミュージシャンの付け人をしていたがクビになり、スロットで働いていたが体を壊しそうになり辞めていた。ふたりの話題はスロットになり、スロットがひどい会社で、ブラック企業の典型だった。スロットが流通を制して、経営の手本扱いになっていることを知る。そして、ふたりは飲みながらスロットの弱点について話しながら過ごした。数か月後、宅配便を輸送していた運送会社のトラックの荷台から突然火が出て大混乱になった。以後、国内の物流が滞り、さまざまな産業が打撃を受け始める。

非正規社員が増えることは、日本にとっては将来においてたくさんの生活保護者を生み出すことになるかも知れないと警告している。


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