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読書を楽しむ「山田詠美 血も涙もある」

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料理研究家・沢口希久江50歳

料理研究家の助手・和泉桃子35歳

料理研究家の夫でイラストレイターの沢口太郎40歳

和泉桃子は沢口希久江の夫・太郎を寝取っていた

桃子は短大の食物栄養科を卒業して管理栄養士を目指していたが友人のケータリングサーヴィス会社の手伝いをして、出張先のパーティで沢口希久江に出会い、希久江の提案で働くことになって10年を経過した。1年前に桃子は希久江の手作り弁当を太郎に届ける役目を引き受け、稲荷寿司を一緒に食べた日から互いを好ましく感じていると認識し合った。桃子は人の男と寝ても、罪の意識を持たないで堂々としていた。桃子は太郎と肌が合うという条件を満たしていた。

希久江は秘書から桃子と太郎が二人きりで会っているみたいだと聞いたが太郎の女がらみの話は飽きるほどこれまでも聞いていた。太郎に女の影が付きまとうのは仕方がないと思っていた。希久江は平穏を大事にしていた。太郎を手に入れたと実感したときからずっとそうしてる。太郎の浮気に直面しても案ずるより産むが易しの心境で、太郎と女たちの仲はすぐに終わっていた。

太郎は希久江と32歳で出会って付き合い始めてから、綺麗で温かな水の中にいるような気分で、何の不自由もなく18年間生きてきた。太郎は男と女の始まりは、「そそる」という発露が必要で、それがない限り男と女の領域にはいけないと思っている。独りでいるときに脳裏に希久江と桃子の顔が交互に浮かぶが太郎は二つの世界のそれぞれの中で、別々の女を必要としていた。

太郎は桃子との関係をマスコミが嗅ぎまわっていると知った時、希久江に「桃子は傷つきやすいから」という言葉を何気に口にしてしまったことで希久江から「傷つきやすいと言われている女が自分だったら、言っている男は、ハリー・ディーン・スタントンに見える」と言われた。それ誰と?太郎は印象に残った。

希久江が労作性狭心症で仕事中に倒れた。病院には太郎の大学時代の友人・玉木が到着していた。玉木とコーヒーを飲みながら病院の喫茶室で一息ついていた時に太郎は何気に「ハリー・ディーン・スタントンって知ってる?」と玉木に聞いたら「若い頃のハリー・ディーンに似ていると言われたことがある」と答えた。その瞬間、太郎は殺意を覚え、これこそが自分にとっての不倫の産物と知った。

人生なんて、傷口から流れる血を舐めてくれる人と、流れる涙を拭ってくれる人がそばにいてくれるだけで足りるんじゃないの?サラッと書いているが何気に辛口な不倫物語。だからエイミー本はやめられない。

希久江は入院中の自分の仕事の代わりを桃子に任せ、血も涙もあるところを見せたとさ。


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