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読書を楽しむ「桜木紫乃 俺と師匠とブルーボーイとストリッパー」

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俺は釧路にあるキャバレー「パラダイス」で下働きをしている名倉章介

師匠は年末のショーに出演する「世界的有名マジシャン:チャーリー片西」

ブルーボーイは同じくショーに出演する「シャンソン界の大御所:ソコ・シャネル」

ストリッパーは同じくショーに出演する「今世紀最大級の踊り子:フラワーひとみ」

3日前に博打うちの父ちゃんが死んだと母から連絡があり、葬式に行かなかったら母が骨壺を入れた風呂敷と手紙を章介に渡して消えた。八畳4室の平屋のアパートがパラダイスの寮で章介しか住んでいない。16歳の時にバイトの張り紙に惹かれ「パラダイス」の下働きをしている。パラダイスの建物の1階は収容人員200人のワンフロアで2階は80人収容の姉妹店「アダムとイブ」で吹き抜けの回廊造りになっている。マネージャーの木崎から年末年始のショーに出演するタレントの世話を頼まれた。やってきた3人は今まで出会ったどんなタレントとも違っていた。「世界的有名マジシャン」「シャンソン界の大御所」「今世紀最大級の踊り子」と言われていたが、店に現れたのは、売り文句とは程遠いどん底タレント3人。3人は無料の寮があるならそちらに長期滞在すると言ってマネージャが紹介した旅館を断った。そして、どん底タレント3人と章介の一か月間の共同生活がはじまった。ひとは他人と家族のように暮らすことでいろいろな社会勉強をすることができる。

この物語は日々をなんとなく目的もなく生きている章介がどん底タレントと過ごしたことで自分のこの先を考えるきっかけになる物語でもある。マネージャーの木崎は章介に3人との生活が終了したことで固定給も社会保障もないアルバイト生活を振り返る時だと諭し、パラダイスはいい場所だけど町は水産で成り立っているため水産業が落ち込んだらパラダイスで働いている人間はふるいにかけられるという。章介は親父が死んで、母親とは別れ、頼る先がないと言う。木崎は「いちど外に出て、やりたいことが見つかったらそれでよし、見つからなかったらパラダイスへ戻っておいで」と言った。20歳の章介の若さはこの先何度でも立ち上げることができる強みだった。元号が平成に変わった時、章介は東京暮らしをしていた。職を転々として5年前にちいさなプロダクションに入社して、結婚式などのビデオ撮影やTV番組の資料映像撮影の仕事をしていた。この物語のラストシーンはあなたの希望になる。


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