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読書を楽しむ「高山羽根子 如何様(イカサマ)」

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世田谷に長屋じみた建築物アトリエ・ヴェルデある

建物の一角に平泉タエは暮らしていた

タエの夫・平泉貫一は水彩画家で先の大戦末期に出征して

部隊に入り、体を壊し、医療施設に入院し、終戦後は

捕虜として収容されていたが復員し世田谷のアトリエを

仮住まいにしていた

タエと義父母は一緒に暮らしていた

アトリエの所有者は美術系の出版社だった

この出版社の編集部に貫一と懇意にしている榎田がいた

タエは貫一が兵役中に平泉家に嫁いだため復員するまで

面識がなかった

榎田に頼まれてわたしが調べていることは復員した貫一についてであった。復員して帰ってきたことはめでたいことではあったが、ただ貫一の姿が出征前の写真と現在の彼の姿が普通に考えたら似ても似つかぬ赤の他人顔であった。戦前の姿は自画像を写真に焼いたものが残っていて、写真と比較すると現在の貫一の顔は十人全員が別人であると言い切ることができるほど似ていなかった。両親も貫一が帰ってきたときに誰かもわからぬ男を復員兵としてもてなした。しかし書類では彼が貫一であると証明されていた。貫一は復員後、アトリエで絵の制作に打ち込んでいたがある日ふっつり、どこかに姿を消した。榎田は戦争で焼け出された平泉家の面倒も見ていたので彼が替え玉ではないかとわたしに話を持ち掛けてきた。わたしは榎田の依頼を受け調査を始めた。読者に新しい楽しみを与えてくれた作品だった。難しいのは正体不明の男であっても女はそうは考えない。


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