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読書を楽しむ「矢樹 純 不知火判事の比類なき被告人質問」

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不知火判事の「他に類を見ない」被告人質問集

ニートの娘が母親を殺した事件。横浜市内の団地に住む保険外交員の51歳の母親・佐伯昌子が一度も働いたことがない30歳の長女・汐美に殺され現行犯逮捕された。佐伯家にはほかに21歳の次女・美波がいた。汐美は小学生のころから年の離れた妹の面倒を見てきて妹の健康状態に不安を覚え、病院へ連れて行こうとしたが母親が病院を受診することを許さなかったので妹を守るために犯行に及んだということだった。裁判がはじまり弁護側から汐美が母を殺した妹を庇って嘘の証言をしたと面会で言ったことが報告され一旦休廷となった。被告人質問がはじまり汐美は「母を殺したのは私です」と証言した。不知火判事の被告人質問がはじまった。判事は「被告人が母親の首を絞めて殺害したあと、さらに包丁で胸を刺したのは、二人分殺すためですか」と質問した。判事は、被告人が多重人格障害者で、母親も同じ症状を起こしていたことを見抜いた。(二人分の殺意)

飛び降り自殺しようとしたおじさんが、通りかかった男の人を巻き込んだ事件。飛び降りた男は年齢45歳の足場施工会社の経営者・多田。巻き込まれたのは多田の元受け会社・唐島建設の社員で陸上部員で駅伝の選手・三条。ふたりは仕事上の接点はないと言っていたがSNSの匿名の投稿で居酒屋で言い争っているのを目撃されていた。裁判では三条と多田がグルになった保険金詐欺事件ではないかという疑惑が生まれ多田が三条から頼まれ断れなかったと証言した。そして、不知火判事の被告人質問がはじまった。「被告人がビルから飛び降りたのは、保険金詐欺ではなく、死ぬためですね」と質問した。判事は9年前の多摩川での高校生ホームレス襲撃事件のことを質問した。多田が河川敷で暮らしていた時に起きた事件で曽部というホームレスが命を落とし、曽部は多田と親密な関係にあった。そのときの高校生の中に三条がいた。(生きている理由)

エステティックサロンの運営会社役員・秋葉が女性従業員・吉沢に殺害され、現場に火をつけて逃走した事件。吉沢は秋葉の遺体の一部を切り取って持ち去っていた。そして秋葉は会社の金を横領していた。この事件の不知火判事の被告人質問は「被告人が被害者の毛髪と爪を切り取って逃げたのは、母親と同じお墓に、秋葉さんの形見をいれてあげるためですか」。(燃えさしの花弁)

裁判での証拠説明の後に、その証拠をもとに検察官、弁護人、裁判員、裁判官が被告人に質問をする。このとき不知火判事は場違いの質問を行うが事件の真相を的確にとらえているものでミステリーの新しい楽しみ方を提供された気分です。


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