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読書を楽しむ「凪良ゆう 汝、星のごとく」

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月に一度、夫が恋人に会いに行くという井上家

母親が一時たりとも男なしでは生きられないという靑埜家

ふたつの家族は瀬戸内の小さな島に住んでいる

井上家には17歳の高校生・暁海がいる

靑埜家には17歳の高校生・櫂がいる

それぞれの家のそれぞれの人に、それぞれの苦しみや悲しみや幸せがある。みんなそれを守りたくて、誰にも侵されたくなくている。そのために人は生きていく上で最低限の武器を準備しているか、していないかで人生がちがってくる。その武器とは、自分で自分を養えること。今作の本屋大賞はこんなことがテーマで書かれている。

靑埜櫂は母子家庭で、母親は一時たりとも男なしでは生きられない女で、京都で知り合った男を追って、1年前にこの島に引っ越して、島で唯一のスナックをやっている。結局は男に捨てられた。櫂は小説を投稿していた。漫画や小説を投稿するサイトで櫂は久住尚人と知り合い、彼から櫂の小説を漫画にしたいと持ち掛けれ、少年誌に投稿したが結果は選外だったが同じ出販社の青年誌の編集者・植木から連絡があり、櫂と尚人と植木で連載枠の獲得を目指すことになった。

井上暁海は、父が東京から来た裁縫の先生と2年前から付き合い始め、3年目に入った今年の春、父親は家を出て行った。母親は怒りと憂鬱に塞ぎこみ、月に2度メンタルクリニックへ安定剤をもらいに行くようになった。島中のひとが父親が家を出たことを知っていた。

暁海は母親に頼まれて父親の様子を見に行くことをなり、漁港を通ったときに櫂を見つけ、彼は酒の匂いをさせていた。漁港のバス停からふたりはバスで隣島へ入り、バスを降りた。父親の恋人は瞳子といい、暁海は彼女の主催する刺繡教室の初心者コースに参加していた。中国茶とバウンドケーキをご馳走になり、父親は不在だった。櫂と暁海はバスを待つ間話し込んだ。櫂は島には正しい家族しかいないと思っていたがそうではないことを知った。

「汝、星のごとく」は、櫂と暁海と櫂の母親と暁海の母親と暁海の父親の恋人・瞳子と漫画家の尚人と編集者の植木と島の高校の科学の先生・北原のそれぞれの苦しみや悲しみや幸せが描かれている。そういう人々を通して櫂と暁海の32歳までが描かれている。そして、小説家の櫂が最後に書いた本が「汝、星のごとく」だった。手の届かない星のように、いつまでもそこに在り続けるという意味だ。

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本屋大賞を受賞したがベストセラーには必ずしもなっていない。この手の内容の本を苦手とするひとが多いためと推測する。


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