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読書を楽しむ「岡田秀文 治験島」

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西ケ島はC県を代表する観光地であり

地域の救命医療をになう市西総合病院を

中心に公立や民間の研究施設が立ち並び

島全体が最先端科学の拠点となっている

この島を治験島と呼んでいる

市西総合病院で世界的な製薬会社ハリスン製薬が開発を進めていたSU-480というアレルギー治療薬の治験を実施することになり治験参加者が10名集合した。13日間入院し、その間、頻回に採血をし、実薬と偽薬をそれぞれ6日間服用することになった。参加者は坊咲、亜館、斎田、村上、小島、新貝、影山、佐々木、峯、川崎のアレルギー性鼻炎患者10名で、すべて男性、年齢は上が57歳、下が22歳だった。病院関係者は、治験管理室の黒井室長、治験コーディネーターの八島と深田、今宮、事務の木村、耳鼻科部長の佐伯、神経内科医の羽山、治験責任医師の榊原がいた。ハリスン製薬の治験担当者添島や臨床開発部長の神坂も病院に顔を出していた。

治験初日に被験者の症例ファイルから「SU-480治験は呪われている。必ず失敗する」と書かれた紙片が落ちた。同じ紙片が黒井室長のデスクにも置かれていた。治験2日目。病棟外の非常階段下で通りかかった清掃員が耳鼻科部長の佐伯が倒れているのを発見した。非常階段で転落し亡くなっていた。治験5日目。史料館の跡地の工事現場の地中から白骨死体が発見された。治験6日目。被験者小島・佐々木・峯・川崎の4人が治験薬を投与された後でジュースを飲み、痙攣や嘔吐、意識障害、呼吸困難な状態に陥った。治験7日目にパラコート(除草剤)中毒だと診断された。そして、重症だった小島が呼吸不全で亡くなった。治験コーデネーターの深田は被験者の村上と以前、婚姻関係にあり離婚しているが原因は、彼の強姦未遂や高校生への痴漢行為だったため今回の事件も彼の仕業ではないかと警察に訴えた。

転落死、毒入りジュース殺人、白骨死体。立て続けに発生した事件に警察署から乾警部補が捜査に当たった。毒入りジュース殺人では、治験期間中に被験者の斎田が他の被験者に喉が渇かないかと何度も聞いて、自分はドリンクに手を付けていなかったことを名探偵を気取る被験者の亜館が指摘した。

アレルギー治療薬の開発に関しては、誰が開発し、どこの製薬会社が製造・販売をしてという流れ以外にライバル会社が開発者の引き抜き工作をしたり、研究データの盗み出しを計画したりしていた。新薬開発に関わるあらゆる事象をてんこ盛りにした本作は事件の解決に10年を要した。さてさてどのように解決していったのかは本を読んでのお楽しみ。


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