読書を楽しむ「桜木紫乃 彼女たち」
イチコさんは学校にはいかずおとなになった
イチコさんはたくさん働いた
大学教員の仕事を得た日に
道ばたで生まれたばかりの捨て猫をひろった
イチコさんは「ジョン」と名づけた
ジョンはイチコさんと暮らしはじめた。ふたりは20年すごしたあと、ジョンは歩くことも食べることもできなくなってイチコさんの腕の中で旅に出た。イチコさんは玄関でジョンを呼ぶ。「ただ今、ジョンン」と。ジョンはイチコさんの「なつかしいもの」になって彼女のそばにいる。(ジョンとイチコ)
モネはぐずる子を保育園にあずけた朝、仕事をやめたくなった。今しかできないことを選び続けてきたのに疲れている。やりのこした家事が散らばっている。(モネの1日)
ケイは70歳の誕生日にとおいところにいったあのひとに話しかけケーキのろうそくをふき消す。ケイは今夜も明かりの下で、あのひとが書きのこした手紙を読む。今日は楽しかったことはなんですか。今日食べたおいしいものを教えてください。どうか明日も。笑っていてください。(夕暮れのケイ)
3人の彼女たちにはいまを乗り越える力があるというフォトストーリー。