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読書を楽しむ「楡 周平 ショート・セール」

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業績が低迷している会社に

プロの経営者が乗り込んでくる

経営再建の名の下

日本人には憚られるような

ドラスティックな手法で

組織改革を行い

余剰となった人員をリストラして

人件費を大幅に削減し

資産を売却する

本業の業績が低迷しても

利益は増大する

そして、数字の上では黒字になり

経営再建を果たしたように見せる

そんな悪党の物語

自動車メーカー「パシフィツク・モータース」は戦後の高度経済成長の中で世界的企業へと成長を遂げたが、代々創業家一族が経営トップに就いてきたオーナー企業で社長の鶴の一声で事業の多角化を図り失敗を繰り返していた。赤字の拡大とともに創業家は会社から一掃され、株主の声に押され会社再建を託されたのが日経三世のアメリカ人鳴島だった。就任から5年で大胆な経営改革を実施し優良企業に生まれ変わらせた。鳴島は自分の任務は終わったと言って後任に不採算部門の整理で陣頭指揮をとった樋熊信郎に託した。ところが工場を閉鎖し、従業員を整理し、金目の物を売り払ったがために一時的に回復した業績は低迷し樋熊は3年前に社長を退任した。

樋熊の娘・令は投資ファンド「ウシジマ・ヒクマ」で副社長をしている。従業員は15名。共同経営者は牛島真吉だった。会社を食い物にして大金を稼いでおさらばするような悪党をのさばらせちゃだめだと言い、魂胆を見抜いた段階で痛い目に遭わせるのもファンドの仕事だと考えていた。

牛島が自動車のオリエンタルを巡って妙な動きがあると情報を得てきた。聞いたことのないアメリカのファンドや投資家がオリエンタルの株を買い漁っていた。オリエンタルは業績が長いこと低迷し、アメリカで車の事故が起き、車の欠陥が原因とされて膨大な賠償金を請求されていた。業績不振の会社の株をあえて買うには、確たる理由があると睨んだ。そして、アメリカ人のプロ経営者が新社長に就任した。オリエンタルの経営を改善し、EVの時代を世界のメーカーに伍して戦い、勝利する企業にすることと宣言した。

プロ経営者に食い物にされた父親の復讐のために令は、オリエンタルの新社長の背後にいる連中の正体を調べ始めた。悪党の正体を暴き二度と悪事に手を染めることができないくらい、再起不能、路頭に迷うまで追い詰めて、地獄を見せようとしていた。読書から学ぶことは多い。そして、自分のためになることがたくさんある。


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