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読書を楽しむ「七月隆文 ぼくときみの半径にだけ届く魔法」

013.JPG                                  高級住宅街で若き無名のカメラマン・須和仁の                                    目に飛び込んできたのは                                                   長い黒髪の女性だった                                 彼女は印象的な大きな窓のそばにいた                                           窓から外を眺める彼女はお姫様だった                            幸村陽との出会いは思わずシャターボタンを押したところからはじまった。                       彼女の自宅に出向き、本人から撮った写真の公開許可を受けた。                                  彼女は病気で外に出られないため須和に外の世界の写真を撮って見せて                                  欲しいと頼んだ。                                           須和には写真の専門学校時代の仲の良い同級生がふたりいた。                             ひとりは加瀬、ひとりは花木。                                              加瀬は広告業界で稼いでいた。                                                花木は写真コンクールを受賞し有名な若手写真家になっていた。                       須和は学生時代から続けている個人スタジオのバイトの身分だった。                       加瀬と花木と飲んだ時にふたりが須和のアパートに立ち寄り                                 ポートフォリオを見られた。                                          その中に外に出られない彼女の写真が入っていた。                                   その写真を花木は”奇跡の1枚だ”と言った。                               ふたりに出会いの経緯を話したら彼女の写真を撮り続けて作品としてまとめ、                   コンクールに出せば受賞できると言われた。                                 彼女の病気は世界で彼女だけの症例だった。                               症状は10歳のときから出始め、中学生になったときは校内でも発作を起こし、                    学校に行けなくなった。                                                 気まずい空気を作り出したり、人に嫌な思いをさせて申し訳ないとか、                       そういう気持ちになったとき、それが発作につながっていた。                                  やがて、ずっと外に出られなかった彼女がひとりで外に出て、須和がやっと                                 探し出した場所は星が見える山の上だった。                                 このとき、須和は彼女のことを「好きだ」と言った。                                          彼女は「私なんかでいいんですか」と言い、「たくさん迷惑かけます」とも言った。                    それは、ぼくたち二人の身体を合わせた半径にだけ届く魔法みたいだった。                     ページを読めば読むほどに魔法がかけられて、物事が少しずつ良い方へ進んでいく                   というラブストーリーで、こういう夢のようなお話もたまにはいいかも。


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