読書を楽しむ「小田部 尚文 プロポーズ・アゲイン」
徳江吾作という銀行マンが秋葉原をバラックやプレハブの街から 近代的な電気ビル街に変えた その男の仕事と恋の物語 24歳の光洋銀行神田支店の融資係の徳江吾作は背丈は180センチを超え、 体重は90キロを超す大男だった。 吾作は入行してすぐに銀行命でアメリカのシカゴ大学に1年間留学した 経歴の持ち主だった。 吾作はひとり者で古いものに魅力を感じる男だったが見た目はだらしがない 男に見られていた。 そんな吾作だが几帳面な性格で部屋は整理整頓され、書く字はひどかったが、 稟議等の文章の中身は秀逸で数字の正確さ、論理の展開から結論への導き方は 一流大学をトップで卒業しただけのことはあった。 吾作が大型融資をしようとしていたのは篠田無線という会社でプレハブ建ての 小さな電気屋で50を過ぎたオヤジと20を過ぎた娘・路のふたり暮らしで社員は パートを含め5人。娘と30過ぎの青木が経理を担当していた。 吾作の提案は、電気屋と八百屋をいっしょにして3億円でビルにすれば電化製品が 飛ぶように売れるという話だった。 吾作は小学生の時に交通事故で両親を亡くし、親類に預けられ大学を卒業した。 だから吾作は家族の愛情を欲しがっていた。 そんな吾作の心の奥に電気屋の一人娘・路が小さな火を灯した。 融資がうまくいって秋葉原が電気街になり繁盛したときに吾作はアメリカへ 赴任してしまった。