読書を楽しむ「池永 陽 珈琲屋の人々 宝物を探しに」
東京は下町の商店街にある『珈琲屋』 主人の行介はかつて、ある理由から人を殺していた…… 今日の客は古書店の主人・草平 草平と智美はヨーロッパの古い家の一室のような古書店 「芦川書房」を経営している。 ふたりは大学のミステリー研究会で知り合い ルパン好きの智美とホームズ好きの草平がどちらが優れているか 論争を繰り返し結婚した。 8ケ月前までサラリーマンをしていた草平は 脱サラして古書店を開店させた。 8坪ほどの空間に書棚が並び古びた本が納まっている。 店主の草平は29歳になり、妻の智美は31歳になった。 店を訪れる客は少なく智美は近所のスーパーにパートに出ていた。 草平は妻が帰宅するまで珈琲屋へ出かけた。 草平は昭和30年代に刊行された乱歩全集の2巻目を宝物と呼んでいた。 古書店を開いた理由のひとつは古書店を開けば、この本に巡り合うのでは という気持ちからだった。 智美は店の改装のときの借金や家賃もあり将来に不安を感じていた。 結婚して貯めたお金も、あと1年で底をつく事態だった。 草平は妻の不安を払拭するために「乱歩の2巻目が手に入ったら、智美のいう 通りにする」と宣言する。 ある日、テーブルの上に1枚のメモを残し智美は消えた。 「宝物を捜しに行ってきます」。