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読書を楽しむ「稲葉真弓 月兎耳の家」

CIMG5222.JPG                            82歳の叔母が左足首を骨折した                                      病院は退院したが不自由さに困り果てていて                                 1ケ月ほど住み込んで面倒を私がみることになった                          佐奈叔母は姉である母より三つ年下だった。                                 食事の世話や洗濯などを頼まれた。                                     若い頃の叔母はモノクロ写真の中であかぬけた着物姿をしていた。                      戦時中は赤十字に勤めていたが、突然女優志願に変わり、劇団のような                         ところに潜り込んだ。                                                      恋人ができても次々に恋人が変わり住所は不定だった。                         その話をしたら貧乏だったから住所が転々としたことがわかった。                        やがて叔母はある劇団の看板女優の葵の付け人になった。                             葵は妊娠したが誰の子か分からず、その子は産まれて3年もしないうちに                             病気で亡くなり、子を失ったことで葵は壊れていった。                                叔母は葵の家に同居して50年近く姉妹のように暮らした。                              葵は両親から家とアパートを引継ぎアパートの家賃収入で暮らしていた。                   散歩で町にでたときに葵は花屋で月兎耳という植物を購入した。                          葵にとっては月兎耳の葉の1枚1枚が赤ん坊の皮膚の感触だった。                                 やがて葵は栃木の施設に入り、叔母もその施設に引っ越すことになっていた。               ふたりの女が寄り添うように生きた家で                                   ふたりは地味な植物・月兎耳を育てていた。                                  人生は小説より奇なり


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