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読書を楽しむ「村田沙耶香 ギンイロノウタ」

CIMG5358.JPG                           私が”化け物”だとしたら                                             それはある日突然そうなったのか                                      少しずつ変わっていったのか                                            こどもの頃の私は                                              臆病で愚鈍で”化け物”には程遠いこどもだった                                  私の名は有里                                       幼稚園の頃、「魔法使いパールちゃん」というアニメーションが好きだった。                               パールちゃんは魔法のステッキを使い、魔法の扉から異世界へ出かけて                                     困った人や悪者をやっつけたりした。                                          有里ちゃんも文房具屋でステッキを見つけ買った。                                それは学校の先生が黒板を指すときにつかうものだった。                                 こども部屋の押し入れに向けて魔法の扉になってくださいと唱えたが扉に                             かわることはなかった。                                                     黒い部屋へ連れてってくださいとお願いして押し入れの中に入った。                                      小学校2年生になったときには図書館で本を借りて第二次性徴を知り、                                     自慰を恥ずかしいことだと思わなかった。                               中学生になったころからクラスの女の子に口を聞いてもらえなくなった。                  男の先輩に誘われて彼のマンションにいった。先輩を怒らせて帰ってきた。                     授業中にステッキがポケットから転げ落ち先生に見つかった。                      そのときアラームがなり有里は走り出して家に駆け込んだ。                             ステッキを失った有里は外の世界が自分の中に入ってくると感じ息が                          苦しくなってきた。ノートに「殺」という字を繰り返し書き込んだ。                    その夜、ノートに担任の名を書いて「殺してしまいたい」と書いた。                      高校生になってからは殺してからの光景をノートに書く分量が増えた。                  7月になったときに中学の同級生から元担任が交通事故で死んだと知らされる。              その夜はノートを書かずに眠った。                                  それから部屋から出ることがなくなり学校へもいかなくなった。                      そして、孤独な環境で過ごす有里のこころの中は想像が及ばない世界になって                 いって、化け物になった。                                        ひととの接し方ができないひとで現代は溢れている。                          そういう環境にスポットを当てると、ときとして有里みたいな子がいてもおかしく              ないが化け物になってはいけない。


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