SSブログ

読書を楽しむ「秋月達郎 信長の首 本能寺異聞」

CIMG0422.JPG

天正10年6月2日

伊賀の国の山中に迷い込んだ具足櫃を背負った若侍と

伊賀の忍者でくノ一の楓が出会った

同じ年の5月29日には本能寺の変が起きていた

若侍は戦に出て落ちのびたようで全身に血飛沫きを浴びていた。侍の左腿に蝮が食らい付き、楓は反射的に小柄を放ち蝮を退治し、傷口から毒を吸い取った。若侍を樵小屋へ案内し休ませた。若侍は京から伊賀を通り伊勢に出て尾張の知多へ行くと言っていた。楓が音羽の村にひとり戻った時に本能寺で明智光秀に織田信長が討ち取られたという情報を聞いた。伊賀者にとっては信長は前年に伊賀攻めを行い女子供まで殺戮した憎き仇だった。信長の遺骸の所在が不明で村長は落人の捜索を命じた。そのとき野猿という名の忍者が信長の首は斬り落とされ、信長の近習の森蘭丸が忽然と姿を消しているとの情報を伝えた。野猿と楓は伊賀の乱で両親を失い、悲惨な境遇を慰め合うようにまぐあう仲になってしまい、野猿は楓を女房のように扱ったが性格の醜さに楓はうんざりしていた。楓は樵小屋に戻り、美豹の若侍の具足櫃を調べている時に気づかれて抱かれた。小屋の戸が蹴破られ野猿が現れ、小屋の周りには黒装束の人影が見えた。野猿は楓を助けに来た。裏木戸を破り若侍と楓は逃走した。ふたりは古寺に身を潜めた。若侍の体内に情欲が沸いて楓はまた抱かれた。そして、名前を聞いた。若侍は森蘭丸と答えた。本能寺の変について語った。蘭丸は炎の中で寂光寺の本因坊算砂から信長の首を駿河芝川の西山本門寺へ届けることを依頼された。ふたりは伊賀の獣道を通り津の海岸線に出た。漁小舟で伊勢湾を通り知多半島の常滑の浜に着いたところで楓は蘭丸に別れを告げた。数日後、駿河芝川の西山本門寺では信長の首塚が築かれ、その様子を森蘭丸を装いつづけた若侍が窺っていた。若侍は具足櫃を降ろし、鍵を開けると金塊が転がり出た。信長にはひとつの癖があり、金銀を行李に詰めて戦場へ持ちこみ、戦功があった者に褒章として渡していた。その金銀を寺に運んだ若侍は根来の鬼蔵を名乗った。忍者は所詮、騙し騙されるが常で歴史に足跡を残さないことが、忍びの忍びたる所以だった。諸説あり、物語としてはおもしろかった。


共通テーマ: