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読書を楽しむ「法月綸太郎 ノックス・マシン」

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2058年4月、上海大学パラ人文学部ユアン・チンルウは

国家科学技術局から召喚メールを受け取った

ユアンの博士論文について確認したいとの要請だった 

ユアンは、無名の文学研究者で首をかしげた。専攻は数理文学解析だった。ユアンは「ノックスの十戒」を博士論文に選んでいたが指導教官は「ノックスの十戒」の第5項に政治的に正しくない記述が存在していると言っていた。指摘された5項は「探偵小説には、中国人を登場させてはならない」とあった。国家科学技術局に呼ばれた理由は論文の註に記された「1929年2月28日」という日付だった。スタッフ・ルームに通され、そこには量子力学と時間工学と宇宙物理学等を担当する代表が集められていた。そしてタイムトラベル関するレクチャーがはじまり、タイムトラベラーが過去のある時点へ到着した瞬間に、世界は2つに分岐するー未来からのタイムトラベラーが出現しなかった世界Aとタイムトラベラーが出現した世界Bに。過去へのタイムトラベラーは元の世界へ戻れないという説明があった。ところが1929年2月28日にタイムトラベラーを送り込んでも世界は分岐しないという仮説がデータから立証されユアンがタイムトラベラーの候補に選ばれた。そして、1929年2月28日のオックスフォードでユアンはロナルド・ノックスに対面した。そこでノックスは十戒を書いていたが第5項の文章には中国人について一言も書かれていなかった。最後まで読むとおもしろさがわかる。


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