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読書を楽しむ「砂川文次 臆病な都市」

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都内で複数の鳥類が相次いで不審死を遂げ

未確認の感染症が発生しているのではないか? 

との情報が流れていた 

8畳一間のワンルームに住むKは、首都庁の13階にある行政部に勤務している。仕事は市町村との地域連携を担当している。いずれかから収受した文書の体裁を整えて鏡文を添えて適当な部署へ送付するようなことをしている。朝礼で上司が「甲市をはじめとした、いくつかの自治体で同種鳥類の不審死が報告されているが特段対応を取る必要もないが問い合わせがあることから所管部署に供覧を回す」と言った。Kがその仕事を頼まれた。”けり”という鳥だった。いくつかの自治体から未確認野生鳥獣媒介新型感染予防対応に関する要望書が提出された。要望書に対して首都庁の衛生局では検体回収や調査で感染症の事実を裏付けるものは見つからなかった。しかしスーパーでは鶏肉の入荷が減り始め、養鶏所で起きた火事は”けり”の病気のせいで経営者が火をつけたとか流言飛語が出始めた。役人は法規と根拠によって動いているため、具体的な対策を打ち出すには根拠が必要だった。年が明け、新型感染症対策検討会が開催されたが首都庁も国も研究所の担当もウィルスは検知されていないと質問に答えた。鳥害防止ネットの配布と環境美化のガイドラインが対策としてまとめられた。ところが甲市で医学系の組織などが”けり”と感染症、最悪死に至る臨床症状までを医師連盟の名で公表した。そして存在しないはずの新型感染症が独り歩きを始め首都庁や国を巻き込んでいった。Kは健康を証明する検査証明書とワッペンを作成した。そして新型感染症と言われていたものは”けり病”と呼ばれるようになった。こういうおかしな方向へ事態が動いてしまうのかと感心しながら読んだ。世の中の騒ぎから正しい情報を得るのはなかなか難しい。行政の弱点見つけたりということか。


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