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読書を楽しむ「中島京子 妻が椎茸だったころ」

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55歳で亡くなった妻のレシピ帳に

もしわたしが過去にタイムスリップして

どこかの時代にいけるなら

私は私が椎茸だったころに戻りたいと書かれていた 

妻は夫の泰平が定年退職の2日後に亡くなった。葬儀後に娘から電話があり、明日は杉山先生のお料理教室があるから行ってと言われた。生前に妻が申し込んだ教室でドリームジャンボに当たるくらいの価値があるということだった。キャンセルの電話を入れたら、お嬢様にお伝えしてありますが椎茸のみ煮たものをお持ちくださいと言われ電話を切られた。娘に電話を入れたら明日ちらし寿司をつくるので椎茸を甘辛く煮て持って行ってと言われる。干し椎茸を見つけ、鍋に入れ、醤油と砂糖を入れ鍋に火を入れた。キッチンに妻が残したレシピ帳があり目を通した。レシピ帳には愚痴やレシピや自慢話が書かれていた。ページをめくったら「椎茸」という文字が目に入った。そこにタイムスリップしたら椎茸だったころに戻りたいと書かれていた。火にかけた椎茸は「戻す」というステップを忘れてしまい焦がしたので水を入れてそのままにしておいた。翌朝目覚めるといい匂いがした。昨夜水を入れておいたおかげで偶然にも椎茸が戻すという工程をクリアしていた。

料理をしないひとは料理のことがよくわからない。長いこと料理をつくっていると孫からもおじいちゃんのちらし寿司が一番おいしいと言われるようになり、泰平も自分が椎茸だったころのことを思い出す。料理をしないひとはわからないかも知れない。


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