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読書を楽しむ「長野まゆみ その花の名を知らず 左近の桜」

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左近桜蔵は彼岸を過ぎた日に

霊園行のバスに乗っていた

男が饒舌に50年前に森があった話をはじめた

駅のロータリーを出たバスは駅から遠ざかるにつれ、景色のさま変わりが目立ってきていた。訪れるたびに、畑や雑木林は消え失せ新築住宅が立ち並ぶ。前方の座席で男が森の話をはじめた。迷惑なふるまいだが、乗客は気づかないふりをしている。桜蔵は男が語る森の中へ誘われていた。訪ねたこともない家の姿をありありと思い浮かべていた。桜蔵の記憶のなにかが反応したのか不明だった。桜蔵は、その森を知っているように思った。遠い昔、だれかに連れられて出かけたが父の柾ではなかった。この日、左近家の墓ではなく、籍の違う父親である柾の父の墓参りだった。祖父が亡くなり2年が経過して形見分けの会があり祖父の妹が茶道具の茶碗<ざくろ>を欲しがったが<ざくろ>と蓋書きのある函の中は空だった。そして、桜蔵は消えた茶碗とみずからのルーツを追って、異界めぐりの旅がはじまる。不思議な物語の展開で夢の世界が出てきて、現実の世界との境目があいまいでまとまりがうまくつかない読みずらい物語だった。


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