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読書を楽しむ「錦見映理子 恋愛の発酵と腐敗について」

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神谷虎之介は福岡で生まれ育ち

高校を出てパンの修行のために上京した

虎之介が伊都子と出会ったのは10年前で

伊都子のお店の女の子とつきあっていたが

その子と別れてからも飲みにやってきて

棲みついてしまった

つきあい始めて数年は虎之介と一緒に暮らした

虎之介の妻・伊都子はスナック「ルビー」でママをやっていた。虎之介は妻のもとに週一度だけ定休日の前夜にスナックの二階に泊まり、翌日の昼には自分の店・パン屋「ブーランジュリー・ラパン」に戻っていた。妻にはたいてい男がいて、虎之介にも女がいるからが理由らしい。虎之介はパン生地にはじめて触ったときから、その手触りに取りつかれてしまった。パン生地をこねるようになり、発酵した後の、驚くほど柔らかい生地に触れると、その気持ちのよさに恍惚となって我を忘れた。大人になって、女の肌に触れるようになってからも、伊都子が驚くほど柔らかい女で弾力があると初めて抱いたとき思った。22歳の虎之介と44歳の伊都子は寝てみたら体の相性が良すぎて、愛なんかどうでもよくなっていた。

さくら通り商店街には29歳の佐々木万里絵の「紅茶の店マリエ」がある。虎之介が客でやってきてサンドイッチを食べたが吐き出してしまった。そして彼は店のパンを万里絵に持参した。その包みを開くと香ばしい香りがするパンが現れた。以来サンドイッチ用のパンを仕入れるようになった。雪下早苗は商店街にあるスーパーマーケットでレジを担当し、紅茶の店マリエの常連で紅茶を目当てに来る客だった。早苗は9年前に夫を亡くしていた。早苗は閉店間際に虎之介の店に朝食用のパンが欲しくて立ち寄った。そのときレモンの花の蜂蜜をスプーンで差し出され自然に口を開けてスプーンが口から出ていくときにスプーンごと虎之介の手をつかんで、強烈な衝動がやってきて、その日のうちに年下の男と寝てしまった。虎之介から会いたいと言われたことはなかったが、会いにいけば拒絶されることはなく早苗の体に触れてきた。そんな時、伊都子が虎之介の部屋にやってきて関係がバレてしまった。

万里絵の店に虎之介が黒パンを焼いたと言って持参した。万里絵は気に入り北欧サンドとして出したいといい虎之介の店に行ってパン作りの技術を学んだ。疲れ切って虎之介の部屋のベッドで横になりおしゃべりをして自然の流れで軽くキスをした。体に火がついて虎之介に覆いかぶさり、自分から脱いでしまった。万里絵も高校を出て商社に勤め、4年間付き合った上司とも別れ、喫茶店で修行して、父が亡くなり、実家を処分したお金で店を開店したが天涯孤独の身だった。早苗も専業主婦で就職したことがなく働いて寂しさを紛らわしていた。

寂しそうな女に弱い虎之介の人生を知りたい人は本を読んでのお楽しみ。得るモノがあるかも知れない。彼は悪党ではない。


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