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読書を楽しむ「大沢在昌 黒石 新宿鮫Ⅻ」

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中国残留孤児二世、三世で組織した

ネットワーク「金石」

日本人や中国人も所属し犯罪や一般ビジネスに

関する情報のやり取りをしていた

上下関係がなくメンバーのハブとなる人間が

8人いて八石と呼ばれていた

その中の誰かがネットワーク型から

上意下達方式の組織に金石を

変えようとして抵抗する者を

殺害して排除しようとしていた

八石のひとり高川が警視庁公安に

保護を求めてきた

公安総務の矢崎から依頼された新宿署生活安全課の刑事・鮫島は高川に接触した。高川は何者かが金石を牛耳ろうとして、そいつに逆らう奴は皆殺しにされると言い、名前も顔もわからないがネットでは徐福と名乗っていた。その徐福には頭を叩き潰すヘイシ(黒石)という殺し屋がいた。八石のメンバーはネットではハンドルネームで呼ばれていた。高川は”虎”、ほかに”徐福””雲師””安期先生””鉄””扇子””左慈””公園”だった。”鉄”が”徐福”から要求されたのは事業を渡せということだった。断ればヘイシに襲われる。4日後の朝、千葉県袖ケ浦市で石油化学プラント社員の40歳の男性・大木がひき逃げされ死んだ。大木の祖母が中国残留孤児だった。大木は八石の”左慈”だと思われた。大木は事前に殴り殺され、交通事故に見せかけられていた。鮫島は高川に更なる情報提供を要求した。

事件の背景には、中国ではある時期、一人っ子政策が実施され、子どもは一人までと決められ、違反すれば罰金が科せられた。生活の苦しい農家などで双子や三つ子が生まれてしまった場合、子どものいない親戚などに里子に出されていた。農家では子どもは働き手として重宝されたが戸籍に載せない子どもも多くいた。その子どもは就学できず犯罪組織に組み込まれる者も多くいた。

久々の新宿鮫はシリーズ12作目。金石のはじまりは、残留孤児の互助会的な組織だったが、犯罪やビジネスに役立つ情報を交換するうちに、組織を利用することを考えた者がいて、リーダーの座につこうとした。そしてその人物の指示で動いている殺し屋がヘイシだった。最後まで読むと残留孤児家族の運命を感じる。


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