読書を楽しむ「村松 友視 騙す人びと」
権藤彦十郎は俳優でひと月後に67歳の誕生日を迎える 誕生日の日、権藤は行きつけのホテルをとって、マッサージを受け、 サウナに入り、その後昼寝をする。夕方、事前に選んでおいた女を料亭に招待し、 馴染みのバーに立ち寄ってから、ひとりでホテルへ戻り、一時間後に女性がホテル へ向かうというのが誕生日の儀式になっていた。 権藤には川口というマネージャーと後輩の俳優・深町がいて儀式に参加させていた。 権藤は祖父と父が遺した遺産があり妻が管理していたので晩年の生活は 保証されていた。 誕生日の儀式はフランク・シナトラが誕生日の夜にその年に選び抜いた女を ホテルへ招いていたことを真似ていた。 シナトラは部屋で女に対し、この世でこんな悲惨な男はいないという表情を つくって女を見つめると、女もこのひとを救ってあげられるのは自分しか いないと思ってしまうらしい。 今年は川口が女性選びを頼まれ、女優の山口美音子口説いて了解させた。 権藤は癌で来年は誕生日ができないと言って女を口説いた。 女も自分の父親が同じ病気で亡くなっているといい、権藤の密かなファンだと 告白し、権藤の最後の相手役なら演りたいと言った。 誰が騙し、誰が騙されているのか誕生日をテーマにした大人のお話は難しい。