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読書を楽しむ「浅田次郎 黒書院の六兵衛 下」

CIMG5167.JPG                                江戸城内に居座った侍・的矢六兵衛                                                    いったい何のために座り続けているのか?                                                           慶応4年4月4日朝、勅使一行が江戸城に入城した。                                         勅使の中には薩摩の西郷もいた。                                                       西郷は帝鑑の間に入り六兵衛に声をかけたが                                               六兵衛は答えなかった。                                                                            その夜更けに変事が起きた。帝鑑の間から的矢六兵衛が消えた。                                                 探したら六兵衛は居場所を変えていた。                                                                 主君の詰席である「上之御部屋」にいた。                                                                  数日後、六兵衛と同じ御書院番八番の番士を名乗る男が現れた。                                      六兵衛のことを確認すると、正月の勤番明けから奇妙なことが起きた。                                      的矢の屋敷には若党も奉公人も従前のままいる。                                                           御隠居夫妻もいるが、六兵衛と女房子供だけが入れ替わったという話だった。                                            慶応4年4月11日江戸城は新政府軍に引き渡された。                                                         的矢六兵衛は本人ではなく前の将軍家慶喜公だという噂が出た。                                               江戸城明け渡しの隊長加倉井の女房は、六兵衛が堕落した幕臣に納得がいかず                        幕府もなくなってしまったことから、自ら旗本となり鑑たらんとして範を                                                 示されたのではと言った。                                      加倉井は稲荷町に住む的矢家を訪ねたが六兵衛は先月登城し戻っていないと家内                  に言われる。                                             慶応4年5月。前権大納言徳川慶勝公が西の丸御殿に上がり、加倉井は六兵衛が                 前の将軍家慶喜公でないことを確認した。六兵衛は溜間に移動し端座した。                             外国奉行御支配通弁の福地は金貸しの淀屋を訪ね六兵衛の正体を暴こうとした。                六兵衛が淀屋を訪れ大金をはたいて旗本株を買ったことが分かった。                        新政府の軍務官判事・大村は六兵衛を動かすための算段をしたがうまくいかず、              お公家様の回し者ではと疑った。夏になり、六兵衛は西の丸の黒書院に居座った。                  秋になり慶応は明治に改元された。                                   的矢六兵衛は黒書院に座り続けている。                                  「物言えばきりがない。しからば、体に物を言わせるのみ」。                        ひとつの大きな時代がなくなる時が来るとは誰しも考え付かなかった。                                  こんなときにひとりくらいその時代に浸っていたいと考えるひとがいても                   おかしくない。六兵衛とはそういう男ではないのだろうか。


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