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読書を楽しむ「仁木英之 黄泉坂案内人」

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磐田速人は30代半ばを超えた新人タクシードライバー

元社長で妻の美里と娘雪音の3人で公団住宅に暮らす 

ある日、帰宅すると妻子が消えて実家に戻っていた。タクシーを走らせ見覚えのない街に迷い込んだ。「客に入日の上湯川まで」言われたがナビが入力を受け付けなかったため客が降りた。妻子に愛想をつかれた傷心の速人は家族の思い出の地、河口湖へ行き水の中に体が落ちていった。

車が夜の山道を走っていた。車内に礼服を着た男が座っていた。「上湯川まで」と言われボンネットの先端にいる鴉が指す方に運転しろと命じられる。車は小さな集落に入り、一軒の屋敷の前で車を降りた。「入日村へいらっしゃい」と少年に言われた。東京の荻窪に住む速人には記憶のない地名だった。

そこは河童や天狗などの妖が闊歩する不思議な場所だった。村で出会った少女・彩葉はこの村を、うつし世とあの世の狭間に漂う浮島なのだと説明し、速人に仕事の手伝いを持ちかける。それは黄泉の国へ続く長い坂をのぼりきれずにさまよう魂を、坂の上へと導くこと。初仕事は、35歳で亡くなった教育ママが娘のお受験の面接でお母さんが喜ぶから勉強してきたと話、母親が娘に我慢をさせてきたが娘は決して母親が嫌いではなかったという話。二人目は戦争中の話で爆撃機「銀河」で出撃する特攻隊員3人のうちのひとりが前日にフグに当たり出撃できず、仲間たちに負い目を感じていたという話。三人目は町工場で働く夫が家族にいつも空約束ばかりして悔いを残して亡くなり、夢のマイホームを建てるというお話。死んだ後で悔いを残し成仏できずに彷徨う魂を題材にした物語でタクシー運転手の速人は、ナトリに名前を取られて元の世界へ戻れない哀しい男でもある。本にはいろいろな世界があり読めば読むほどおもしろくなる。


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