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読書を楽しむ「江國香織 去年の雪」

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空から降る雪のひとつひとつに

様々なひとびとの生きている情景をイメージして

地上で雪が溶けたとき

「去年の雪はどこへ行ったんだ?」と尋ねる 

市原謙人は事故で息を引き取る瞬間の脳裡が浮かんだ。休日の律子はレンコンを料理し、夫はゲームをしている。夫の義母は、夫の死後”あちらと交信”ができるようになった。藤田みずきと大谷春香は午後の海で写真を撮っていた。小沼茉莉子は電車に乗り小学生の前に立ったとき親友の香坂真紀のことを思い出していた。小学3年生の末松織枝は両親の離婚で東京に引っ越してきて誰とも喋らず授業を受け、おばあちゃんとお昼を食べ、ひとりでバスに乗り習字を習いにいっている。竹田礼生は大谷春香に呼び出されたので高橋雅人と恵比寿で待ち合わせをして飲食できる店を探しに行った。高橋雅人はバスの降りる所を間違えた小学生の女の子からユーテンジはどっちですかと聞かれた。40近い野村健太は渋谷で愛知県出身の3姉妹の末っ子の裕子とラブホテルへ。田中野花はカフェで恋人にドタキャンされ旧友にばったり出くわした。荻原正嗣は遊びに来た弟の規那と囲碁を打ちながら幽霊話を聞かされ、これから女・茴香のもとへ行かなければならず気をもんでいた。柳と呼ばれている妹娘は姉・茴香のとことに来た男が車で帰った音を聞いてからお気に入りのカラスたちに強飯とわかめを投げてやった。15歳の土屋恭子は学校をさぼり公園のベンチでお弁当を食べている。野村萌音は妹から結婚祝いに贈られた姫リンゴの木が死んでいることに気が付かなかった。萌音の夫の健太は数か月前から浮気をしている。伊吹慎一は70の妻とハト時計からハトが12回飛び出す音を聞いた。大垣香澄は男性コンパニオンと月に一度の割合で食事・会話・買い物・観劇など性的接触以外のサービスを利用している。規那は庭で母親に琵琶を弾いて聴かせているが頭の中は毎晩のように現れるもののけに悩まされていた。

延々と様々なひとたちの日常が短い短編で描かれている。170人は出てくる。なかなかに感心する。


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