SSブログ

読書を楽しむ「町田そのこ 52ヘルツのクジラたち」

DSC00300.JPG

東京から逃げて大分県の小さな海辺の町にひとり越してきたキナコ

その家は芸者をやっていた祖母が住んでいた家だった

部屋の床板が腐っていて修繕を依頼した

業者の男・村中からキナコは風俗嬢でヤクザに追われて逃げてきた人物ということになっていると教えられた。働きもせずに、ワケアリの雰囲気で、金を持っていそうだと近所の人々の勝手な憶測からの噂だった。家は小高い丘の頂上にあり、目の前に海があった。散歩へ出たら雨に降られ中学生くらいの女の子と出会った。家は親が放置して持て余していたのをキナコが譲り受けた。雨の日に近所の食料品店に買い物に出た帰りにお腹に刺すような痛みが走り、その場に座り込んだ時に中学生くらいの女の子に助けてもらい家に戻ることができた。びしょ濡れだったのでキナコは女の子とお風呂に入ろうとしてTシャツを脱がしたら肋骨の浮いた痩せた体に痣が散っていた。そして女の子と思っていた子は男の子だった。その子はドアを開けて逃げるように出て行った。虐待された体だった。

52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で響いているのに受け止める仲間がどこにもいない。誰にも届かない声を上げている。たくさんの仲間がいるのに、なにも届かない。何も届けられない。それは孤独を意味する。

キナコも昔52ヘルツの声を上げていた。長い間誰にも届かなかったがひとりだけキナコの声を受け止めるひとがいた。少年は障害があり言葉を発することができなかったのでキナコは52と呼んだ。キナコは身近で52ヘルツの少年を見つけた。少年は「帰りたくない」「ひとりにしないで」と紙に書いてキナコに渡した。

キナコと少年が52ヘルツのクジラになった生い立ちが徐々にわかったとき、この物語の結果を知るために最後まで読みたくなる。そして、この本は今年度の本屋大賞を受賞した。一気読みがお勧めです。


共通テーマ: