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読書を楽しむ「サーシャ・フィリペンコ 理不尽ゲーム」

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ひとりずつ理不尽な話をする

話し終えたら誰かに順番を譲る

ドイツの企業家がベラルーシ共和国でソーセージ工場を作った。地元の住民にもおいしいと言われ人気だった。混ぜ物入りのソーセージを製造していた国営工場の工場長はこのことで工場が閉鎖され解雇されてしまうと考えた。工場長は製品の改良など考えない。彼はドイツ人の工場を閉鎖すればいいと考え、専門家を雇って検証させ、ドイツ人のつくるソーセージは国の規格を上回っていることを突き止め、ドイツ人の工場は閉鎖された。

16歳の少年フランツィスクは芸術専門学校の生徒。5月の終わりに保護者を集めて進級判定会議があり退学判定をされた。友人のスタースとフェスへ出かけた。地下鉄へ続く通路の入り口で別の友人を待っているときに雨が降ってきて、そのうちに雹も混じり四方八方から幾千の群衆が地下通路に殺到し人が圧死していった。次の日の朝、運動公園で開催されたイベントが終わるころ突然の大雨で雨宿りをしようと人々が地下通路に殺到し群衆圧迫事故が起き50名以上が死んだと報道された。フランツィスクは将棋倒しの事故で酸素が欠乏し脳の血液が滞り昏睡状態になった。入院が長引くに従い病院へは実の母親より祖母が多く訪れた。やがて実の母親は医師と再婚した。独立記念日の日に人混みの中で爆発事件が起きた。大統領は犯人は自分に投票しなかった人の中にいると言って男性国民全員の指紋採取が強制的に行われた。祖母が姿を見せなくなり亡くなったことが判明した。フランツィスクは10年も身じろぎせずに病室で眠っていた。そんなフランツィスクが突然ふたつの同じ音を発した。「ばぁ、ば・・」。10年の昏睡から医師はさじを投げ、実の母親も快復をあきらめたが奇跡的に生還したフランツィスク。意識を取り戻したフランツィスクが見たものは、ひとりの大統領にすべてを掌握された祖国と、理不尽な状況に疑問をもつことも許されぬ人々の姿と独裁国家だった。彼は理不尽ゲームに恐怖と失望を覚える。日本は平和だ。



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