読書を楽しむ「若竹七海 暗い越流」
5年前、多摩川で起きた5人殺しの殺人犯・磯崎保に ファンレターが届いた 差出人は山本優子 住所はなく、消印は調布 出版社の嘱託社員の私は 弁護士から編集長に相談された この件を調べることになった 磯崎の事件は彼が多摩川沿いに車を停めて仮眠をとっていたとき女性が 連れていた犬が吠えて、このことがきっかけになり磯崎は女性と犬を はねとばし、更に数人のひとを刎ねて、パトカーに追われバスに追突 して逮捕された。 バスの乗客も亡くなったが小指を骨折しただけのラッキーな男がいた。 わたしはその男・福富大吉を訪ねた。 彼は当時彼女に振られ死を望んでいたが死ななかった。 彼女は中学の同級生で母親が祖母の介護に疲れ家を出たために父親と祖母の 面倒を見ていたが、5年前に突然いなくなった。 彼女の父親に確認したら娘は出て行ったと言われた。 その女性の名が山本優子だった。 わたしは福富に教えられた山本優子の家を訪ねた。 山本の家は調布にあった。広い家だった。 山本家の一軒先にワイドショーの画面で見慣れた家があった。 その家は今にも倒れそうな木造家屋だった。磯崎保の家だった。 山本優子は5年前から失踪していた。 警察には父親から捜索願が出されていた。 ファンレターの送り主は5年前に失踪中。何かがおかしい。 越流とは、家の中から悪事が溢れ出すと解釈した。