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読書を楽しむ「リャオ イ ウ 武漢病毒襲来」

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2020年1月23日午前10時中国当局は武漢市封鎖令を発表した

50歳を過ぎたアイデインがベルリンから北京空港へ到着したのは

まさにこのときであった

乗り換える予定の武漢行きフライトはキャンセルになっていた

アイデインは、湖北人で家は武漢にあった

妻に連絡して妻の実家のある長沙まで行くことにした。数時間待って乗換機に搭乗したが、隣の乗客がアイデインのことを湖北人が乗っていると騒ぎトイレに隔離されてしまう。長沙黄花空港の派出所に連行され、ホテルで1週間の隔離観察後に解放された。妻の実家に辿り着いたアイデインに妻から武漢に帰ってくるなと連絡が入る。住んでいるマンションだけでも死者が10数人出ていて、病院は満杯で、入院できず、みんな自宅隔離していて、火葬場の車には遺体がぎゅうぎゅう詰めになっているということだった。アイデインは友人たちにチャットで武漢人や湖北人は新型コロナウイルスとみなされると愚痴をこぼした。アイデインは湖北省の生まれで武漢大学で博士号を取得し、ドイツの大学に交換学者として派遣されていたが春節を故郷で過ごすために帰国したのだった。メイド・イン・チャイナのネットと電話は監視対象になった。防疫指導部が現れて2週間の強制隔離を命じられドアは釘で打ち付けられた。アイデインは日記を書いて時間をつぶすことにした。武漢に閉じ込められた900万人はネットでストレスを発散した。そして群衆は怒りを爆発させた。誰が責任を負うべきかと?華南海鮮市場が武漢肺炎の発生地と認定され、武漢人は野生動物を好んで食べる悪い習慣があるという結論に行きついてしまった。市場を知る住人は蝙蝠は眺めるものであって食べることなどしないと証言した。2019年12月30日35歳の医師がグループチャットで市場で7例のSARS感染の確定診断が出たと警告を発したが国家の法律に抵触するとしてデマ発信者として口をつぐむよう命令された。アイデインは武漢ウイルスの起源を探って時間をつぶした。2週間後ドアが開けられ通行証が交付され運転手付のオートバイで長沙南駅へ向かったが運転手が無症状の武漢肺炎患者で事故を起こして亡くなるというアクシデントに遭遇した。陰謀論や真相論を議論しても独裁者のいる国ではなんでもありで意味がないらしい。アイデインは1ケ月半が過ぎても湖北省の外にいた。武漢にはこのとき皇帝がお成りになった。アイデインは陸路がダメなら水路があると考え密航で家に向かう。

これは限りなくノンフィクションに近い小説。中国では重要な時代の記録は小説という形で出版することで検閲が多少緩くなるという理由かららしい。本書はベルリンで著されたもので、SNSやスカイブやユーチューブなどを使い武漢で起きていることを拾い上げ小説の形に再構築されている。1年半前、世界で最初にコロナ禍に見舞われた中国では、いったい何が起きていたのかが、小説という形を借りて、描かれている。武漢肺炎発生時の様子を知りたいひとにはお勧めです。中国人でなくてよかったと思う内容で日本ではあり得ないことが起きていることを知る。


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