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読書を楽しむ 芥川賞受賞「井戸川射子 この世の喜びよ」

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ショッピングセンターの喪服売り場で働く「あなた」

喪服売り場の向かいはゲームセンター

あなたは幼い娘たちとお世話になったことを思い出す

2つあるフードコートのひとつに夕方から暗くなるまで長い時間座っている少女に気づいた。少女は時々スーパー内を徘徊し、ゲームセンターやガチャガチャのところにひっそり立っていたりした。ある時、積み上げた教科書が手で当たって雪崩を起こしジュースのコップが倒れた。あなたは小さなタオルを取り出し少女に差し出す。少女は高校生には見えなかった。中学三年生。あなたは毎日来たってつまらないでしょ、何も変わらなくてと話しかけた。少女の家には1歳の弟がいてずっと泣いているんだという。母親は3人目を妊娠中で少女が弟の面倒を見ていた。だから放課後は帰っても気まずくならない時間まで居られる場所を探していた。寒くなってきたからジュース150円でずっと座っていられる場所を探しあてた。あなたは話を聞きながら昔の自分に言ってあげるように、大変だと頷いた。少女と話しながらあなたは過っての日々が呼び起されていく。あなたは思い出し、長く待っていられる場所が団地の近くにあったことを。そして、あなたは何かを伝えられる喜びに溢れた。1/19芥川賞を受賞した。


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