読書を楽しむ「稲葉真弓 砂の肖像」
雑誌の「掲示板」に私が掲載したのは 「石や砂を集めています。あなたのお持ちのものを わけてください」だった 三週間後、マレーシアにあるリゾートの島の ビーチの砂が送られてきた こうして私は、M氏と知り合った M氏の住所は山梨県内の富士山の麓の町だった。 手紙には「老境」と書かれてあるだけで年齢も不明だった。 私は勝手に裕福な老人なのだろうと思った。 一週間後、またM氏からインドネシアと南米ガラパゴス諸島の島の 砂が送られてきた。 M氏へお礼の手紙を書くのが私の楽しみになった。 手紙には他愛のない日常の報告も書いた。 M氏に猫の本を送ったら猫のことが話題になり、猫のグッズが送られてきた。 M氏は、ほろびゆく老人で自分の思い出を引き受けてくれるひとと時間を 過ごそうとしていた。 歳を取るとこういう関係を築こうと考えるひともいるかも知れない。