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読書を楽しむ「ジョン・コナリー キャクストン私設図書館」

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バージャー氏は35歳で小さな役所の都市開発課で

締切済勘定係という肩書を与えられていた

彼が36歳の誕生日に役所が移転の発表を行い、新体制になり締切済勘定係は用無しになった。時を同じくしてバージャー氏の最後の近親者の老母が亡くなり息子に家と株券を残してくれた。バージャー氏は母親が住んでいたグロッサムという小さな町の郊外に立つ小さな家で晩年を小説の構想を練りながら過ごしたが思い通りに行かなかった。バージャー氏は自分は作家にもなれず読むだけで満足すべき人間ではないかという気持ちになってきた。バージャー氏は線路沿いを散歩するようになった。ある時、線路の先にある深いしげみを突っ切っていく女の姿が見えた。女は列車が来る前に線路を渡ってしまおうとしていた。女は赤いバックを放り出し、列車の行く手にひざまずいた。彼にいるところからは衝突の瞬間は見えずに列車は止まろうとせず走り続けた。女がいたところへバージャー氏は行ったがそこには何もなかった。彼は警察へ電話をして目撃したことを説明したが死体もバッグも発見されず見間違いで処理された。

バージャー氏は女の自殺がある本の一場面とよく似ているということに気づいた。列車への飛び込み自殺を描いた文学史上有名な場面で文学的証拠を探してみようと心に決めた。「アンナ・カレーニア」の31章を読んだ。アンナは自分の真正面に先頭車両の真ん中が来たら飛び込むつもりでいた。女を見た場面は「アンナ・カレーニア」のクライマックスシーンの再現だった。散歩を再開したが線路に何もおかしなことは起こらなかったが2月が訪れ、あの女が再び姿を現した。女の自殺の邪魔をしたら女が細い通りに消えていくのが見えた。道は先の方で左右に分かれ右の道をバージャー氏は進んだ。レンガ造りの二階建ての建物が姿を現した。ドアの上のレンガに名前が彫られていた。〈キャクストン私設図書館&書物保管庫〉。ここから先は本を読んでのお楽しみ。


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